気持ちの流れるままに、物語を書いています。

転生船長 第45話 - 成果ゼロ

商売相手を探すAIの設計が完了し、
稼働開始した。
さてさてAIくんたちと手分けしながら、
商売相手を探していきますかね。

探し方としては、
まずは文明レベルが高い知的生命体がいるかどうかで探す、
という方法と、
魔力結晶そのものがあるかどうかで探す、
という方法と、
魔力結晶に比較的容易に変換できるものがあるかどうかで探す、
の3通りある。

知的生命体の検索はAIには難しいが、
私の探知系の魔法だと探しやすいので、
これは私が担当。
あとの2つはAIくんたちにまかせることとした。


星間マップを出して、まずはこの恒星系が存在する銀河系内部で調べてみる。

・・・

えーと、10日間かけて成果ゼロでした。
知的生命体はいるんだけど、
うちの恒星系と似たようなもんだわ。
まあ、魔力結晶そのもの、あるいは、魔力結晶に変換可能な鉱物があれば
検討してみてもいいけど、それは、AIくんたちの調査待ちって感じかしらね。

じゃあ、他の銀河系あたってみるか。
アースがあったところがわりと銀河系として近いのよね。
アース以外、って感じで検索してみるかね。
この銀河系もわりと星多いのよね。
少し距離があるから、探知にも少し時間がかかるけど、
がんばりますかね。

・・・

えーと、30日間かけて成果ゼロでした。
ああ、わかっちゃいたけど、この徒労感。
頑張った結果「ないことがわかった」という成果のみという。

AIくんたちの進捗もちらちら見ているが、
思わしい成果はまったくなし。

・・・

よし、AIくんたちの検索はそのまま継続するとして、
すこし気晴らしに母星でもうろついてみますかね。


転生船長 第44話 - キサラ19才、商売相手探し再開

19才になった。
オプティのボディはどのくらいの肉体年齢がちょうどいいのか探っていたが、
このあたりから劣化箇所がみられてきたので、
肉体年齢は18才をキープできるように調整、、、したいところだけど、
魔力不足的な理由で、実質18.5歳、というところだ。

理論上は魔法を極めれば不老になれる。
といってもまあ、自前の魔力だけだとだんだんきつくなる、というのが自然の摂理。
魔力結晶を定期的にゲットできるようになり、
自前以外に魔力を外部からゲットがあるなら、それを用いれば不老が実現できる。
ただ、そのためには富が必要。
富を得るためには商売をする必要がある。
そして、商売にはリスクがつきもので、
前世の私みたいに命を落とすこともあるわけで。
まあ、長寿ってのは簡単じゃない。

探ってみた感じ、この恒星系の人型知的生命体で同じことができる種族はなし。
龍は少し似たようなことができるようだが、
魔力を外部からゲット、というのが基本的にはできないから、長寿の龍は限られている。
魔力を外部からゲット、というので、まあ、なんというか、同族から魔力をかっぱらってるたちの悪いのが数匹いて、
そいつらが龍の中では強者だ。

悪いやつが強い、っていうのがまかり通っているという、お察しな精神文明レベルの低さ。
時代遅れだねー、ってこの恒星系だとこの程度が実のところ標準的なのかもしれないが、
私からすると、レベルが古すぎて呆れる。
これはやっぱり龍とは交流しないのが正解だね。

せめて不老を達成できるようなくらいには、
魔力結晶を確保したいところだ。

自前で魔力結晶を生産するプラント的なものを作成する、
という手もあるっちゃあるが、
大掛かりだし、それは正直、私のやりたいことではない。
前世では、そういう施設はあって、そこで魔力結晶を買う、というのは、
わりと魔法が使える人たちの定番ではあったが、
この世界に作るっていうのもありかもしれないが、、、、
めんどくさいし、私がやりたいと思えることでもない。

やっぱり商売相手を探しますかねー。

今まで商売相手を自力で探していたが、AIにも探してもらおう。
あと、最悪、商売相手がなかなか見つからなかったケースも想定して、
魔力結晶生成プラントの準備もしておこう。
これまた、AIにも頑張ってもらおう。
まあ、私が作る魔力結晶プラントなんて、しょっぼい出来栄えになるような気がするが。
なにかの役に立つかもしれないので、
それ用のAIの開発も、優先度は低めながら、やっておこうかなと思う。

転生船長 第43話 - 木村武志 エピローグ

謎の女はそのあと全く来なくなった。
目的が達成できなかったなら、もう用済み、ということなのだろうか。

それにしても美人だった。
異世界から来ただのなんだの言っていたが、
これをきっかけにクソみたいなオレの人生も
なにか変わるんじゃないだろうかと
期待をしなかったといったら嘘になる。

密かには思っていたのだ。

魔法を教えてもらったり、
別世界に連れて行ってもらったり、
あるいは、、、いや、これは自分でも鼻で笑いたくなるようなことだ、
これは、あえて考えない。

まあ、そんな驚きの展開が来ればいいな、なんてことを
年甲斐もなく考えたりもしたものだったが、
もうあの謎の女と関わることもなくなるというのも、
なんだかな、って感じだ。

怖い思いも散々したし、
酷いこともされた。
命を助けてもらったとはいえ、
まあ、台風のようなやつだったから、
正直、厄介だとも思ってはいたのだがな。

それにしても、ちょっと薄情じゃないのかね?
人類の悪口を散々言って終わり、って、
それが最後のやり取りってか。
虚しいねぇ。


そんなことを思っていたらある日、
会社から帰ったら、家のテーブルの上に、
何やら紙が1枚おいてあった。

そこにこのように書いてあった。

「気が向いたら、また遊びに行くわ。
 
 キサラ
 
 えー、ちなみに、空いてるスペースにボールペンで文字を書くと、
 私から返事がくるかもしれません。」

なんだこりゃ。

試しにボールペンでメッセージを書いてみた。

「このまま音信不通になるのかと思っていたよ。
 
 遊びに来るにしても、こちらにも予定というものがある。
 この前のように突然来られても正直困る。
 事前に相談するなりなんなりしてくれると助かるのだがね。
 
 木村」

魔法を使うと紙でチャットができるのかねぇ?

ふと見るとオレの書いた文字が薄い青色になった。
これは既読、ということなのか??

そして、キサラの文字が消えて、
別の文字が出てきた。

「そりゃそうよね。
 わかった。今度行くときはちゃんと予定を聞いてからにする。
 なんか色々とゴメンね。
 
 といっても、次に連絡するのいつになるかわからないけどね。
 私も忙しいから。
 
 じゃね。
 
 キサラ」

ふと、自分の顔がニヤついているのに気づいてしまった。
いい大人が何を期待しているんだか、な。



転生船長 第42話 - アースはダメだ

ひどい出来事だった。
あれだけ準備して、言語も覚えたというのに、この体たらく。

ダイヤの原石を錬金術で作成するにしても、
ある程度の純度は必要だろうってことで、
ごりごりと魔力を使って精製したというのに、
それをあと何回もやらないと
十分な量の金のインゴットが入手できない、だと。

ふざけるのも大概にしてほしいものだ。
それだったら、一から自分で魔力結晶作るよ。
いや、、、時間かかるし大変だからやらないけど。

人助けして、ダイヤの原石を献上して、
結果得たのが現地のお金って、なによこれ。
記念にもらっておくけど。

私はアースに出稼ぎにきた訳じゃないのよ。

アースはダメだ。
あの惑星は本当に役に立たない。
はあ、、、。


まあ、こういう失敗はあるものなのよ。
恒星系間貿易にハプニングはつきもの。

ダメだったときは、次!

他の星系をあたってみようかしらね。

大丈夫。
時間はたっぷりあるんだから。


ま、まあ、暇ができたらまたアースに遊びに行ってあげるのもいいかもね。
現地通貨は少しならあるし、
現地通貨がなくなったらまたダイヤの原石を作ればいいのよ。


転生船長 第41話 - 木村武志6

「ハロー、御機嫌いかが?」

家のインターホンが鳴ったのでカメラ越しに見てみれば、
謎の女がいた。

「おかげさまで元気だよ。」

「入れてくださいまし。」

「はいよ。」

どうやってこの家の場所を割り出したのかは聞かないでおこう。

貴金属の換金方法はオレなりに調べていたが、
謎の女が魔法でどんな貴金属を作れるのか知らなかったので、
実際に見せてもらった。

宝石の原石を作成できるようだった。
金鉱石も作成できるようだったが、
金鉱石については、正直、どうやって売り捌けばいいのかオレは見当もつかなかった。

金は作れるが純度が低いので、精製する必要があるが、
その精製が大変、ということらしかった。

ダイヤの原石であれば買い取りをしてくれるところが見つけられそうなので、
1つ持ち込んでみる、ということになった。

あんまり大きすぎると目立つので、そこそこの大きさのものを謎の女に用意してもらい、
それをオレが店に持ち込むことになった。


換金にはしばらく時間はかかりそうなので、後日また来てもらうことにした。


買い取り店での手続きをもろもろして、現金を得た頃に、
再び謎の女が家に来た。

で、どのくらいお金を得ることができたのかと、
あとそれをどのくらいやれば、どのくらいの量の金のインゴットが購入できるのかを話して聞かせた。

そうしたら女がキレた。

そりゃあもう盛大に喚き散らした。

ものの価値がわからない知的生命体だとか、
これだから技術レベルの低い惑星は嫌いなんだとか、
有人探査船を恒星系外に出せない時点で終わってるとか、
とにかく人類の悪口をバラエティ豊かに言っていたが、
途中からオレは聞いていなかった。

頭から湯気が出そうな雰囲気をひきずったままに、女は去っていった。

一応換金できたお金はどうするのか聞いたら、
それは持っていかれた。

やはりお金はほしいようだ。

転生船長 第40話 - 木村武志5

警察が来るまでの間、謎の女としばらく話をした。

謎の女はこの世界で金のインゴットを入手したいらしい。
インゴットを購入するための現金を得る方法を探っており、
女の魔法で生成した貴金属をどこかで換金することができないのか、
というので、方法を模索しているらしく、
貴金属の換金と、インゴットの購入に関しての協力をしてほしい、とのことだった。

それなら自分で金のインゴットを作ればいいと思ったのだが、
それはできないらしい。
できない理由はよくわからなかったが、
なんか魔法上な制限のようなものがあるようだ。

オレ以外の人間とはあまり接触したくないらしい。
理由はよく分からなかったが、
あまり目立ちたくないらしい。
何やら怪しいが、命を助けてもらった身だ。
あれこれ詮索するのも野暮ってもんだろう。

よっぽどヤバイことに手を貸さなきゃならないような事態になったら
オレも考えなきゃならんが、
この女相手にそんなことを考えても、
こっちにできることは何もないだろうし、
大体、こちらの考えを結構読めるようで、
時折見透かしたようなことを言われた。
あまり、妙なことを考えないほうが、こちらにとっても身のためというものだろう。

言いたいことを言った後、女は夜空に消えていった。
また向こうからこちらに連絡してくる、とのことだった。
どうやって連絡してくるつもりなのかは知らないが、
電話番号もLINEもメールアドレスも何も聞かれなかったな。
そもそも、あいつがスマホを所持しているのかも知らないが。


そして、警察が来た。
結構事細かく聞かれて、ごまかすのが大変だった。

なんで車がこんな状態で、オレが無傷なんだってのも妙な話なので、
口裏合わせのために、再びオレは謎の女に空中に持ち上げられて、
超高速でぶん投げられて地面を転がることになり、
大きな怪我はないが、さらに服はぼろぼろになり、あっちこっち擦りむけることになった。
正直、また死ぬのかと思った。
ひどい女だ。

ブレーキが効かなくなって、カーブが曲がりきれなくなり、
とっさに車外に脱出したってことにした。
正直苦しかったけどな。
普通に考えたらそっちのほうがはるかに危ないし、
それで助かってるってのも変な話だ。

その後も色々処理をして大変だったが、
命が助かっただけでも良しとしないとな。

転生船長 第39話 - 木村武志4

謎の女は異世界人らしい。
見た目はどうみても日本人だが、魔法の存在は疑いようもない。
体のどこにも異常がないというのも奇跡だ。
こんなことできる人間は普通いないだろう。

それにしても、なぜ、助けられたんだ?
どうせボランティアってわけじゃないだろう。

ラノベや漫画の世界だと、助ける代わりに何か求められたりするが、
この謎の女もそんな感じのことを言い出すんだろうか?

「命を助けてくれて本当にありがとう。
 正直助からないと思っていた。」

「いえいえ。お安い御用ですよ。」

「こんなことを命の恩人に聞くのもなんだが、
 どうしてこんな山中に?」

「助けるためにわざわざ来たんですよ。」

「それはどういう、、、」

「こういうことです。」

そう言うと謎の女は空中に浮かんだ。

「あなたを助けるために、
 夜空を駆けてビューンとひとっ飛びにやってきたというわけです。」

「ははっ、そいつはなんともすごいな。」

「実はちょっと相談したいことがありまして。」

「なんだ?」

「私はあまりこの世界について知らないことが多いので、色々と教えていただきたいのですね。
 あと、この世界に来た目的についても、あなたにお話した上で、ちょっと協力をお願いしたいことがあるのですよ。」

やはり、そういうことだったようだ。
目的があって、オレのことを助けたのだろう。

「命の恩人にそう言われて断れるような人間じゃないんでね。
 なんなりと協力されてもらうよ。」

「お!ご協力感謝です!つきましては、、、」

そういって、女はちらりと車を見る。

「これ、なんとかしますかね。」

車が空中に持ち上がった。

「ちょっと待て。どうするつもり、、、」

「車を崖の上まで移動した後、ガードレールにぶつかったていになるように修理っぽいことをします。
 事故の偽装ですね。」

「そんなことできるのかよ。」

「事故ってない状態にまで戻すのは流石にむりですけど、その程度なら。」

「まじか・・・」

その後、オレも謎の女に空中移動させられた。

崖の上に車を移動した後、なんか車に魔法をかけており、
ガキッベコッと大きなあり得ない音を立てて、車の形をある程度元に戻した後、
再び車を猛スピードで自動で走らせて(魔法でアクセルを踏んだ??)、
急ブレーキをこれまた自動でかけたが(魔法でブレーキを踏んだ??)、
間に合わない、、、というていで、
思いっきりオレの車をガードレールにぶつけやがった。

「うん!こんなもんでしょ!
 あなた!
 さあ、警察を呼ぶのよ!」

警察は知ってるのかよ、、、。

転生船長 第38話 - 木村武志3

オレはどうも女の機嫌を損ねたらしい。
少し不機嫌な表情をして、こんなことを言われた。

「私幽霊じゃないですけど。」

「いや、そんなことは思ってないが」

「思ってたじゃないですか。
 なんですか、オレはどうやら何かに取り憑かれてしまったらしい、って。」

どうやら心が読めるらしい。

「それなりに読めますよ。」

なにこいつ怖い。

「怖がらなくても大丈夫ですよー」

「ちょっと待て。そもそもなんだ?
 命を助けた、というのは何のことなんだ?」

「車は完全に壊れているのに、あなたは全身無傷ですよね?」

「・・・・どうもそうらしいな。」

「なぜ?」

「なぜ、と言われても」

「私が治療したからです。」

「どうやって?」

「魔法で。」

女は車に手をかざす。
フロントガラスの破片がキラキラと光って集まり、フロントガラスがもとに戻る。

いや、待て。そもそもオレはなんで深夜にこんな山中で周囲が見えている?
明かりがある。どこに?
上?
見上げると、空中に光る玉が複数浮いていて、光源となって周囲を照らしている。

「現実感がないですか?」

「ああ、何か騙されているかのような気分でもあり、
 ただ、こういうのは嫌いじゃなくて、信じたい気持ちもある。」

「私、異世界から来たんですよ。
 魔法を使える世界からここにやって来たんです。」

「まじか・・・」

「そしてあなたが命の危機に瀕しているのを見つけて、
 助けた、というわけです。」

「まじか・・・」

キサラは、嘘は言っていない。
嘘を言ってはいないが、かなり意図的に制限した情報のみ与えた。

まるで今しがた異世界からやってきて、たまたま偶然命を助けた、かのように受け取られるように。

木村がオカルト好きで、ライトノベルをわりと読んでいて、
想像の世界では異世界転生というものに馴染みがあるということをキサラは把握しており、
そこに乗っかる形にしたのだった。


転生船長 第37話 - 木村武志2

車の中で意識を取り戻して顔をあげると、
割れたフロントガラスの向こう側に美人が立っていた。

ん?
なんでこんなところに?

「大丈夫ですかー?」

「ああ、悪いが、救急車を呼んでくれないか?」

「どこか痛みますかー?」

「ああ、、、、ん?」

どこも痛くない、だと。
車は完全にぶっ壊れている。
だが、体はどこも痛くない。
前歯がちゃんとある。折れてない、、、だと。

「降りられますかー?」

「ああ、たぶんな」

車のドアは動かない。完全に潰れて動かなくなっている。
割れたフロントガラスから這い出すか・・・?

「ドア、開かないですよね。」

「そのようだな。どうしようかな・・・」

「今開けますねー。」

ドゴッ、バゴッ。
カランカラーン。

「どうぞー」

「・・・・」

今起きたことをありのままに言うのなら、
眼の前の美人が力任せにドアをひっぱってこじ開けたら、
ドアが車から外れて、地面に転がり、オレは車の外に出られるようになった。

見た目に反して、力が強いのかな?

「えーと、ありがとう。」

「それは命を助けたことに対しての感謝ってことであってますか?」

オレは今何を言われた?

眼の前の美人がオレの目を覗き込む。

「聞こえてますかー?」

「ああ、聞こえている」

「では改めて。それは命を助けたことに対しての感謝ってことであってますか?」

眼の前の美人が瞬き一つせずにオレの目をじっと覗き込む。

なんだこいつ。

さっきまでは気づかなかったが、違和感しかない。
そういえば、深夜にこんな山中にこいつはなんでここにいる。
スニーカーにスカート。明らかに登山をするような格好じゃない。
こんな山中で?
一人若い女性が?
しかも深夜にこんな大雨の中、涼しい顔をして?

全身に鳥肌がたった。

心霊スポットなんぞ見に行くからだ。

オレはどうやら何かに取り憑かれてしまったらしい。