気持ちの流れるままに、物語を書いています。

転生船長 第42話 - アースはダメだ

ひどい出来事だった。
あれだけ準備して、言語も覚えたというのに、この体たらく。

ダイヤの原石を錬金術で作成するにしても、
ある程度の純度は必要だろうってことで、
ごりごりと魔力を使って精製したというのに、
それをあと何回もやらないと
十分な量の金のインゴットが入手できない、だと。

ふざけるのも大概にしてほしいものだ。
それだったら、一から自分で魔力結晶作るよ。
いや、、、時間かかるし大変だからやらないけど。

人助けして、ダイヤの原石を献上して、
結果得たのが現地のお金って、なによこれ。
記念にもらっておくけど。

私はアースに出稼ぎにきた訳じゃないのよ。

アースはダメだ。
あの惑星は本当に役に立たない。
はあ、、、。


まあ、こういう失敗はあるものなのよ。
恒星系間貿易にハプニングはつきもの。

ダメだったときは、次!

他の星系をあたってみようかしらね。

大丈夫。
時間はたっぷりあるんだから。


ま、まあ、暇ができたらまたアースに遊びに行ってあげるのもいいかもね。
現地通貨は少しならあるし、
現地通貨がなくなったらまたダイヤの原石を作ればいいのよ。


転生船長 第41話 - 木村武志6

「ハロー、御機嫌いかが?」

家のインターホンが鳴ったのでカメラ越しに見てみれば、
謎の女がいた。

「おかげさまで元気だよ。」

「入れてくださいまし。」

「はいよ。」

どうやってこの家の場所を割り出したのかは聞かないでおこう。

貴金属の換金方法はオレなりに調べていたが、
謎の女が魔法でどんな貴金属を作れるのか知らなかったので、
実際に見せてもらった。

宝石の原石を作成できるようだった。
金鉱石も作成できるようだったが、
金鉱石については、正直、どうやって売り捌けばいいのかオレは見当もつかなかった。

金は作れるが純度が低いので、精製する必要があるが、
その精製が大変、ということらしかった。

ダイヤの原石であれば買い取りをしてくれるところが見つけられそうなので、
1つ持ち込んでみる、ということになった。

あんまり大きすぎると目立つので、そこそこの大きさのものを謎の女に用意してもらい、
それをオレが店に持ち込むことになった。


換金にはしばらく時間はかかりそうなので、後日また来てもらうことにした。


買い取り店での手続きをもろもろして、現金を得た頃に、
再び謎の女が家に来た。

で、どのくらいお金を得ることができたのかと、
あとそれをどのくらいやれば、どのくらいの量の金のインゴットが購入できるのかを話して聞かせた。

そうしたら女がキレた。

そりゃあもう盛大に喚き散らした。

ものの価値がわからない知的生命体だとか、
これだから技術レベルの低い惑星は嫌いなんだとか、
有人探査船を恒星系外に出せない時点で終わってるとか、
とにかく人類の悪口をバラエティ豊かに言っていたが、
途中からオレは聞いていなかった。

頭から湯気が出そうな雰囲気をひきずったままに、女は去っていった。

一応換金できたお金はどうするのか聞いたら、
それは持っていかれた。

やはりお金はほしいようだ。

転生船長 第40話 - 木村武志5

警察が来るまでの間、謎の女としばらく話をした。

謎の女はこの世界で金のインゴットを入手したいらしい。
インゴットを購入するための現金を得る方法を探っており、
女の魔法で生成した貴金属をどこかで換金することができないのか、
というので、方法を模索しているらしく、
貴金属の換金と、インゴットの購入に関しての協力をしてほしい、とのことだった。

それなら自分で金のインゴットを作ればいいと思ったのだが、
それはできないらしい。
できない理由はよくわからなかったが、
なんか魔法上な制限のようなものがあるようだ。

オレ以外の人間とはあまり接触したくないらしい。
理由はよく分からなかったが、
あまり目立ちたくないらしい。
何やら怪しいが、命を助けてもらった身だ。
あれこれ詮索するのも野暮ってもんだろう。

よっぽどヤバイことに手を貸さなきゃならないような事態になったら
オレも考えなきゃならんが、
この女相手にそんなことを考えても、
こっちにできることは何もないだろうし、
大体、こちらの考えを結構読めるようで、
時折見透かしたようなことを言われた。
あまり、妙なことを考えないほうが、こちらにとっても身のためというものだろう。

言いたいことを言った後、女は夜空に消えていった。
また向こうからこちらに連絡してくる、とのことだった。
どうやって連絡してくるつもりなのかは知らないが、
電話番号もLINEもメールアドレスも何も聞かれなかったな。
そもそも、あいつがスマホを所持しているのかも知らないが。


そして、警察が来た。
結構事細かく聞かれて、ごまかすのが大変だった。

なんで車がこんな状態で、オレが無傷なんだってのも妙な話なので、
口裏合わせのために、再びオレは謎の女に空中に持ち上げられて、
超高速でぶん投げられて地面を転がることになり、
大きな怪我はないが、さらに服はぼろぼろになり、あっちこっち擦りむけることになった。
正直、また死ぬのかと思った。
ひどい女だ。

ブレーキが効かなくなって、カーブが曲がりきれなくなり、
とっさに車外に脱出したってことにした。
正直苦しかったけどな。
普通に考えたらそっちのほうがはるかに危ないし、
それで助かってるってのも変な話だ。

その後も色々処理をして大変だったが、
命が助かっただけでも良しとしないとな。

転生船長 第39話 - 木村武志4

謎の女は異世界人らしい。
見た目はどうみても日本人だが、魔法の存在は疑いようもない。
体のどこにも異常がないというのも奇跡だ。
こんなことできる人間は普通いないだろう。

それにしても、なぜ、助けられたんだ?
どうせボランティアってわけじゃないだろう。

ラノベや漫画の世界だと、助ける代わりに何か求められたりするが、
この謎の女もそんな感じのことを言い出すんだろうか?

「命を助けてくれて本当にありがとう。
 正直助からないと思っていた。」

「いえいえ。お安い御用ですよ。」

「こんなことを命の恩人に聞くのもなんだが、
 どうしてこんな山中に?」

「助けるためにわざわざ来たんですよ。」

「それはどういう、、、」

「こういうことです。」

そう言うと謎の女は空中に浮かんだ。

「あなたを助けるために、
 夜空を駆けてビューンとひとっ飛びにやってきたというわけです。」

「ははっ、そいつはなんともすごいな。」

「実はちょっと相談したいことがありまして。」

「なんだ?」

「私はあまりこの世界について知らないことが多いので、色々と教えていただきたいのですね。
 あと、この世界に来た目的についても、あなたにお話した上で、ちょっと協力をお願いしたいことがあるのですよ。」

やはり、そういうことだったようだ。
目的があって、オレのことを助けたのだろう。

「命の恩人にそう言われて断れるような人間じゃないんでね。
 なんなりと協力されてもらうよ。」

「お!ご協力感謝です!つきましては、、、」

そういって、女はちらりと車を見る。

「これ、なんとかしますかね。」

車が空中に持ち上がった。

「ちょっと待て。どうするつもり、、、」

「車を崖の上まで移動した後、ガードレールにぶつかったていになるように修理っぽいことをします。
 事故の偽装ですね。」

「そんなことできるのかよ。」

「事故ってない状態にまで戻すのは流石にむりですけど、その程度なら。」

「まじか・・・」

その後、オレも謎の女に空中移動させられた。

崖の上に車を移動した後、なんか車に魔法をかけており、
ガキッベコッと大きなあり得ない音を立てて、車の形をある程度元に戻した後、
再び車を猛スピードで自動で走らせて(魔法でアクセルを踏んだ??)、
急ブレーキをこれまた自動でかけたが(魔法でブレーキを踏んだ??)、
間に合わない、、、というていで、
思いっきりオレの車をガードレールにぶつけやがった。

「うん!こんなもんでしょ!
 あなた!
 さあ、警察を呼ぶのよ!」

警察は知ってるのかよ、、、。

転生船長 第38話 - 木村武志3

オレはどうも女の機嫌を損ねたらしい。
少し不機嫌な表情をして、こんなことを言われた。

「私幽霊じゃないですけど。」

「いや、そんなことは思ってないが」

「思ってたじゃないですか。
 なんですか、オレはどうやら何かに取り憑かれてしまったらしい、って。」

どうやら心が読めるらしい。

「それなりに読めますよ。」

なにこいつ怖い。

「怖がらなくても大丈夫ですよー」

「ちょっと待て。そもそもなんだ?
 命を助けた、というのは何のことなんだ?」

「車は完全に壊れているのに、あなたは全身無傷ですよね?」

「・・・・どうもそうらしいな。」

「なぜ?」

「なぜ、と言われても」

「私が治療したからです。」

「どうやって?」

「魔法で。」

女は車に手をかざす。
フロントガラスの破片がキラキラと光って集まり、フロントガラスがもとに戻る。

いや、待て。そもそもオレはなんで深夜にこんな山中で周囲が見えている?
明かりがある。どこに?
上?
見上げると、空中に光る玉が複数浮いていて、光源となって周囲を照らしている。

「現実感がないですか?」

「ああ、何か騙されているかのような気分でもあり、
 ただ、こういうのは嫌いじゃなくて、信じたい気持ちもある。」

「私、異世界から来たんですよ。
 魔法を使える世界からここにやって来たんです。」

「まじか・・・」

「そしてあなたが命の危機に瀕しているのを見つけて、
 助けた、というわけです。」

「まじか・・・」

キサラは、嘘は言っていない。
嘘を言ってはいないが、かなり意図的に制限した情報のみ与えた。

まるで今しがた異世界からやってきて、たまたま偶然命を助けた、かのように受け取られるように。

木村がオカルト好きで、ライトノベルをわりと読んでいて、
想像の世界では異世界転生というものに馴染みがあるということをキサラは把握しており、
そこに乗っかる形にしたのだった。


転生船長 第37話 - 木村武志2

車の中で意識を取り戻して顔をあげると、
割れたフロントガラスの向こう側に美人が立っていた。

ん?
なんでこんなところに?

「大丈夫ですかー?」

「ああ、悪いが、救急車を呼んでくれないか?」

「どこか痛みますかー?」

「ああ、、、、ん?」

どこも痛くない、だと。
車は完全にぶっ壊れている。
だが、体はどこも痛くない。
前歯がちゃんとある。折れてない、、、だと。

「降りられますかー?」

「ああ、たぶんな」

車のドアは動かない。完全に潰れて動かなくなっている。
割れたフロントガラスから這い出すか・・・?

「ドア、開かないですよね。」

「そのようだな。どうしようかな・・・」

「今開けますねー。」

ドゴッ、バゴッ。
カランカラーン。

「どうぞー」

「・・・・」

今起きたことをありのままに言うのなら、
眼の前の美人が力任せにドアをひっぱってこじ開けたら、
ドアが車から外れて、地面に転がり、オレは車の外に出られるようになった。

見た目に反して、力が強いのかな?

「えーと、ありがとう。」

「それは命を助けたことに対しての感謝ってことであってますか?」

オレは今何を言われた?

眼の前の美人がオレの目を覗き込む。

「聞こえてますかー?」

「ああ、聞こえている」

「では改めて。それは命を助けたことに対しての感謝ってことであってますか?」

眼の前の美人が瞬き一つせずにオレの目をじっと覗き込む。

なんだこいつ。

さっきまでは気づかなかったが、違和感しかない。
そういえば、深夜にこんな山中にこいつはなんでここにいる。
スニーカーにスカート。明らかに登山をするような格好じゃない。
こんな山中で?
一人若い女性が?
しかも深夜にこんな大雨の中、涼しい顔をして?

全身に鳥肌がたった。

心霊スポットなんぞ見に行くからだ。

オレはどうやら何かに取り憑かれてしまったらしい。


転生船長 第36話 - 発見!手頃な現地人

いいの見つけた!

なになにー、木村武志っていうのね。
45才のプログラマー。男性。独身。
趣味はオカルト。で、走り屋。で、ライトノベルをよく読み、異世界転生ものが好き。
心霊スポットを見に行った帰りに崖から転落、と。

完全に気を失ってるわね。
私が助けなければ死ぬわね。
というわけで助けましょう。

遠隔操作で、ごにょごにょ、と。
ほい、これで大丈夫、と。

本人が覚醒するまでに、現地に移動しておきましょうかね。

わりと距離あるので、シュババっとお空を飛んでいきましょう。
大雨のなか夜空を移動。
雨に紛れられるから、まあ気づかれないでしょ。

ほい、現地に到着。
たぶん、車はもうダメでしょうね。
本人は、まだ気を失ってるわね。

というわけで起きてもらいましょう。
ちょいちょいっと。
お、反応した。
今、ぴくっと動いたわね。

「う・・・・」
「もしもーし。大丈夫ですかー。」

(どうよジャパン先生、私の現地語。)
(キサラ、完璧ですよ。傘も持たずに全身全く濡れていない以外は。)

どわっ!
いきなり違和感ありすぎでありましたね。
傘、傘、と。
たしか、あんな感じの形のやつでしたな。
錬金術で生成、っと。

よし、これで見た目は完璧だ。

(キサラ、この惑星のこの国で、深夜に見た目若い女性がそんな普段着で傘をさしてこんな山中を・・・・)
(ジャパン先生うるさい!)

よし、これで見た目は概ねOKだ。
誰がなんと言おうとOKだ。


転生船長 第35話 - 木村武志

ついにやっちまった。

ガードレールのないカーブを曲がりきれず、
そのまま転落。
そしれオレは走馬灯を初めてみることとなった。

危ないことをやっている自覚はあった。
趣味はオカルトと車。
心霊スポットに一人でふらっと行く、というのをやめられない性格。
こんな馬鹿なことばかりしているからこの年まで独り身なんだろうな。

今夜は格別についてなかった。
いや、ある意味ではついていたのか。

心霊スポットではモノホンの幽霊が出た。
わりと霊感はある方なので、
心霊スポットに行くとわりと見るのだが、
今回のはすごかった。

姿がはっきり見えた上に、
雨が降っているのにも関わらず、発火現象があった。
手足が痺れて、一瞬動けなくなった。

急いでその場を立ち去った。
駐車場に向かい、車に乗り込む。
エンジン回して、アクセル踏んで、
急いでその場を離れた。

心理状態としては、
あきらかに冷静さを失っており、
客観的に見ても危ない状態。

大雨の影響で路面が濡れていた。
そんな状態で山道を走れば、そりゃあろくなことにはならない。
曲がりきれないスピードでカーブに入り、
曲がりきれずに転落。

結構な高さがある。
これで助かるなら、奇跡。
もう祈るしかない。

強い衝撃が車を襲う。

顔面を激しく打ち付け、前歯が折れて空中に飛ぶ。ありえない光景。
体に走る激痛。

オレは死を覚悟し、気を失った。


転生船長 第34話 - 現地の協力者見つからず

あれから5日ぐらい経過。
いいのがいないのよねー。

なんというか、何か悪いことをしているわけではないのだけれど、
たくさん見殺しにしている気がするのは気のせいかしらね。

技術格差が激しすぎて、私なら助けられる病気の人とか、
交通事故に合った人とか、めちゃくちゃたくさんいる状況。
ただ、私がこっそり助ける、というのができる状況にいない人たちばっかりなのよね。

なんか辛くなってきたわ。


水難事故で1件おしいのがあったのだけれど、
近くに他の人がいたので、
私はこっそり助けるだけで、その人の前にでてないので
結局、現地協力者とはできなかったり、というのはあったわねー。
はっはっは。

あと、見殺しにする罪悪感が辛くて、
何人かこっそり病院にいる人を命を助けたはしたものの、
やりすぎると目立つので、もう病院の中は感知対象からはずしたほうがよい、
などとジャパン先生から言われる始末。

うーん。
病院以外で、命を落としそうな人というと、
これは交通事故か、あるいは、自然災害系、かな。
あとは、登山の人の遭難系、とか?


なんとうか、長期戦になりそうよね。


あ、事故った人がおった。
うわー派手にクラッシュしたわね。

というか、こういうのもアレよね。
事前にわかるので、すっと対応して事故らないようにもできないことはないのよね。

そういう意味でも見殺しにしてる感が、半端ないわ。
あ、このケースでは、命に別状はないみたい。
大怪我はしていて大変な状況ではあるけれど、
私が出る必要はなさそう。

というわけで、今回もスルーかな。

罪悪感あるので、ちょっと怪我は軽めにしておいてあげましょう。
あまりやりすぎないように気をつけながら、と。


転生船長 第33話 - 現地の協力者を探せ

現地の協力者の探し方。
はい、わかりません。
教えてジャパン先生。

あれ?
答えが帰ってこない。

へいへーい。どうしたジャパン先生。

ん?なになに?
現地の協力者との間に信頼関係が必要だが、
一朝一夕に簡単に作れるものではない、だと。

そりゃあそうだ。
で?どうすればよい?
教えてジャパン先生。

あれ?
またジャパン先生が黙った。

へいへーい。どうしたジャパン先生。

ん?なになに?
命を救うことができれば、それをきっかけに恩を感じてもらうことはできるので、
誰かの命を救って、その相手を現地協力者とするのがいい、だと。

なんじゃそりゃ。
じゃあ何かい。
私がここでお金を稼ぐためには、
ここの現地の誰かが命の危機にさらされないといかんのかーい。

まあ、いいや。
で、そんな命の危機にさらされている人を助けるのって、
結局目立つんじゃないのかい?
なんか、あまり表に出ないほうがいいとかジャパン先生は言ってたけど、
そのあたりどーすんの?

ん?
そういうのに該当する状況を探せ、だと、、、。
そういう情報感知系得意だろう、だと、、、。

ああ、わかったさ。
探してやるさ!

えーと。
この島国にいる現地人で、命の危機にさらされていて、
それは私が助けることができる内容のもので、
かつ、その人物の周囲に誰もおらず、私が個人的にこっそり助けることができる状況。

えー、なんかめんどくさいな。
ま、気長に情報感知してみますかね。

そういう意味では、わりと命の危機にさらされている人は見つかるが、
だいたい、これは、、、病院ってところにいるので、
私が助けると普通に目立ちますな。

チャンスが来るまで、待つのがいいですかね、ジャパン先生。
ん。
安全に行きましょう。

ひたすら情報感知、、、、。