気持ちの流れるままに、物語を書いています。

転生船長 第43話 - 木村武志 エピローグ

謎の女はそのあと全く来なくなった。
目的が達成できなかったなら、もう用済み、ということなのだろうか。

それにしても美人だった。
異世界から来ただのなんだの言っていたが、
これをきっかけにクソみたいなオレの人生も
なにか変わるんじゃないだろうかと
期待をしなかったといったら嘘になる。

密かには思っていたのだ。

魔法を教えてもらったり、
別世界に連れて行ってもらったり、
あるいは、、、いや、これは自分でも鼻で笑いたくなるようなことだ、
これは、あえて考えない。

まあ、そんな驚きの展開が来ればいいな、なんてことを
年甲斐もなく考えたりもしたものだったが、
もうあの謎の女と関わることもなくなるというのも、
なんだかな、って感じだ。

怖い思いも散々したし、
酷いこともされた。
命を助けてもらったとはいえ、
まあ、台風のようなやつだったから、
正直、厄介だとも思ってはいたのだがな。

それにしても、ちょっと薄情じゃないのかね?
人類の悪口を散々言って終わり、って、
それが最後のやり取りってか。
虚しいねぇ。


そんなことを思っていたらある日、
会社から帰ったら、家のテーブルの上に、
何やら紙が1枚おいてあった。

そこにこのように書いてあった。

「気が向いたら、また遊びに行くわ。
 
 キサラ
 
 えー、ちなみに、空いてるスペースにボールペンで文字を書くと、
 私から返事がくるかもしれません。」

なんだこりゃ。

試しにボールペンでメッセージを書いてみた。

「このまま音信不通になるのかと思っていたよ。
 
 遊びに来るにしても、こちらにも予定というものがある。
 この前のように突然来られても正直困る。
 事前に相談するなりなんなりしてくれると助かるのだがね。
 
 木村」

魔法を使うと紙でチャットができるのかねぇ?

ふと見るとオレの書いた文字が薄い青色になった。
これは既読、ということなのか??

そして、キサラの文字が消えて、
別の文字が出てきた。

「そりゃそうよね。
 わかった。今度行くときはちゃんと予定を聞いてからにする。
 なんか色々とゴメンね。
 
 といっても、次に連絡するのいつになるかわからないけどね。
 私も忙しいから。
 
 じゃね。
 
 キサラ」

ふと、自分の顔がニヤついているのに気づいてしまった。
いい大人が何を期待しているんだか、な。