気持ちの流れるままに、物語を書いています。

水口宿 その12

正一郎は右衛門に礼をいった。

「本当にありがとうございました。」

眠っていた幸四郎は目覚め、その後しばらく様子を見ていても
妖怪が再び現れることもなく、無事解決、という運びになったのだ。

「お子さんも少しずつ元気になられているようでよかったですねぇ」
「元気に走り回るまでには幾許かかかりそうではありますが」
「お渡しした丸薬を1日1個、お忘れなきよう」

彦兵衛と正一郎はそんな会話をした。
あふたーけあー、というやつだ。

「それにしても旦那。あざやかな手並みでやしたねぇ。」
「たまたまうまくいった。今回もそれだけだ。」
「いやいや。旦那の腕があったからでさあ。」
「ふむ。」

右衛門は一見謙虚なような態度をとった。
これを謙虚というのかどうかは知らないが。

「そろそろこちらは旅立たれるのですか?」
「ええ、ええ。そろそろ次の街にいこうかと思っておるところでさあ。」

彦兵衛は水口宿から次の街に行商にいくことにしたようだ。