気持ちの流れるままに、物語を書いています。

転生船長 第37話 - 木村武志2

車の中で意識を取り戻して顔をあげると、
割れたフロントガラスの向こう側に美人が立っていた。

ん?
なんでこんなところに?

「大丈夫ですかー?」

「ああ、悪いが、救急車を呼んでくれないか?」

「どこか痛みますかー?」

「ああ、、、、ん?」

どこも痛くない、だと。
車は完全にぶっ壊れている。
だが、体はどこも痛くない。
前歯がちゃんとある。折れてない、、、だと。

「降りられますかー?」

「ああ、たぶんな」

車のドアは動かない。完全に潰れて動かなくなっている。
割れたフロントガラスから這い出すか・・・?

「ドア、開かないですよね。」

「そのようだな。どうしようかな・・・」

「今開けますねー。」

ドゴッ、バゴッ。
カランカラーン。

「どうぞー」

「・・・・」

今起きたことをありのままに言うのなら、
眼の前の美人が力任せにドアをひっぱってこじ開けたら、
ドアが車から外れて、地面に転がり、オレは車の外に出られるようになった。

見た目に反して、力が強いのかな?

「えーと、ありがとう。」

「それは命を助けたことに対しての感謝ってことであってますか?」

オレは今何を言われた?

眼の前の美人がオレの目を覗き込む。

「聞こえてますかー?」

「ああ、聞こえている」

「では改めて。それは命を助けたことに対しての感謝ってことであってますか?」

眼の前の美人が瞬き一つせずにオレの目をじっと覗き込む。

なんだこいつ。

さっきまでは気づかなかったが、違和感しかない。
そういえば、深夜にこんな山中にこいつはなんでここにいる。
スニーカーにスカート。明らかに登山をするような格好じゃない。
こんな山中で?
一人若い女性が?
しかも深夜にこんな大雨の中、涼しい顔をして?

全身に鳥肌がたった。

心霊スポットなんぞ見に行くからだ。

オレはどうやら何かに取り憑かれてしまったらしい。