気持ちの流れるままに、物語を書いています。

第二葉

七夕侍の伝承は次のようなものだった。

ある戦が行われた夜、その日は、ちょうど七夕だったが、
落ち武者となったある武将が、
敵の手から逃れるために、山中の村に逃げ込んだのだ。

そこで、ある民家に立ち寄り、助けを求めたところ、
村は快く侍を受け入れ、食事と寝床の用意までしてくれた。

しかし、その夜、敵方の残党狩りの者たちが、
その村を訪れ、その武将の特徴を伝えて、
居場所を教えてくれたら、金を与えるという話を村人達にしたところ、
村人達は、寝込みを襲ってその侍を縛り上げ、
百叩きにした後、敵方に引き渡したというのだ。

もともと、その村は、敵方の武将に忠誠を誓っていた村で、
その侍を受け入れたのも、油断させて、
後で、縛り上げて、引き渡す意図があって、
受け入れた、という事情があったようなのだ。

村人達は、縛り上げた侍をののしり、意思をなげ、
つばをはきつけ、さんざん辱めを受けさせた後、
敵方の武将の指示のもと、侍を火あぶりにしたそうだ。

そして、侍は、死の直前、こういったそうだ。

この地を住む全ての人間を、呪ってやる。
七夕の夜、を忘れるな。
次の年も、また、その次の年も、呪って、呪って、
呪い殺してやる、と。