気持ちの流れるままに、物語を書いています。

水口宿 その7

次の日、彦兵衛がいつものように、薬を売っていると、
右衛門が姿を見せた。

「おう!彦兵衛殿!
 かせげているかい?」

「旦那ぁ。お久しぶりです。
 また会えるなんて思ってやしませんでしたよ。」

「なに?
 俺がどこかでのたれ死んでるとでも、
 思ったのかい?」

「いえいえ。まさか、同じ町に来てるだなんて、
 思っていなかったもので。

 それに、ちょうど昨日、旦那の力が必要になってきそうな
 話をしていたものですから。
 いや、偶然というか、縁があるものだなあ、
 と思いまして。」

「ほお。俺の力が必要だと?
 金目の話なら乗るぜ。」

「そう来ると思いやしたよ。」

彦兵衛は右衛門に、昨日、正一郎から聞いた話を教えた。

「まあたその類の話か。
 お前、妖怪にでも好かれているのじゃないか?」

「よしてくだせいよ。
 それにしても、妖怪といっても、
 姿もなにもないものですから、
 こちらからはどうしようもないのですがね。」

「俺だって、姿のないものはどうしようもねえや。
 ただ、ちょっと会って話聞いてみるだけでもいいかもな。」

「そんなこと言って、
 金をせびりたいだけじゃあ、ないのですかい?」

「何をいってやがる。
 俺は世のため、人のために、剣をふる。
 人助けのためじゃねえか。」

「そうですかい。」

とりあえず、2人は、正一郎の家を訪れることにした。