気持ちの流れるままに、物語を書いています。

第2話「ボーイフレンド」

私のことを、可愛い、というのはイアン以外に、
もう一人いる。

幼馴染のアベルだ。

彼は、いつも私に優しくしてくれるけれども、
彼には別に女友達がたくさんいて、いつも取り囲まれている。
あんまり、私はその輪の中には入れない。

「おーい、アリス、こっちこいよ!」

いつものように、女友達に囲まれたアベルが
私に声をかけてくる。

こういうとき、ため息がつきたくなる。

いけないとは思いつつも、私は顔を背けて、
聞こえなかった振りをする。

「ねえ、アリス、あれいいの?」

イアンが心配そうに小声で話しかけてくる。

「うん・・・」

私達はそのまま立ち去るけれども、
後ろのほうで、アベルを囲んでいた女友達の笑い声が聞こえた。

なんだか、すごく嫌な気分になったけど、
後ろのほうで、誰かの走る足音が聞こえてくる。
ああ、また、いつものこれだ・・・。

「アリス!」

アベルの声だ。
うう・・・ほっといてほしいのに。

「アリス!どうしたんだよ!」
「別に、なんでもない。」

「・・・そうだ、お店やるんだって?
 イアンと2人で。」

「そうなのよアベル。あんたも来てよね。
 もちろん、常連になってくれるわよね?」

私の代わりにイアンが答える。
こういうときは、イアンが助けてくれるので、本当に助かる。

「もちろん!いつオープンするんだい?」
「明後日よ。だから、今日と明日は準備で忙しいのだけれどもね。」
「良かったら、手伝おうか。夕方からは手が空いてるから・・・」
「いい、いい!2人だけで出来るから。気持ちだけ受け取っておくね。」
「ん?そうか?でもまあ、何かあったら声をかけてくれよ!何でもするから。」
「何?アリスの為ならなんでもやるの?」
「はは。からかうなよ。でも、まあ・・・そうかな?」

私は足早に歩いていく。逃げるように。イアンを置いて。

「アリス待ってよ!置いてかないでったら!」

アベルのことは、気になるのだけれども、
周りに他の人がいるとき、私はいつもこうだ。

素直になれない。

・・・だめだな、本当に、私は。