水口宿 その2
彦兵衛は安い宿を取った。
ここである程度、商売をするつもりなのだ。
宿の飯はまずく、寝床も決して快適ではなかったが、
彦兵衛は気にしなかった。
翌日も、彦兵衛はいつものように、
子供達の相手をしていた。
今度は、紙芝居だ。
彦兵衛の紙芝居は、受けるときと受けないときがあるのだが、
この町では受けたようだった。
紙風船よりも受けが良く、昨日よりも人が多く集まった。
商売が上手くいきそうな気配を
彦兵衛は感じていた。
ここのところ、まずい飯ばかり食べていたが、
久しぶりにうまい酒が飲めるようになることを
彦兵衛は夢見ていた。