気持ちの流れるままに、物語を書いています。

水口宿 その9

右衛門が以前退治した妖怪は
子供にとりついて、といっても、憑依するのではなく、
べったりとくっつくのだ。

夕暮れ時に現れ、子供にべったりはりついたまま、
その子供の動きを完全に奪い、夕日が沈むと去っていった。
妖怪が去った後、子供は意識を失い、寝込んだままとなる。
妖怪を殺すと、子供は意識を取り戻し、じき回復した。

右衛門が妖怪を倒せたのは、たまたまだった。

その妖怪は、人間だけではなく、なんにでもとりつく。
日の出ている間は、暗がりに逃げ、暗がりにいる動物にとりつく。
夜になると、真っ暗闇を避け、月明かりにいる動物にとりつく。
人間に取りつくのは、夕日の出ている間だけ。

そして、何かにとりついているときに、斬られると、その妖怪は死ぬ。

右衛門は、山中で罠にかかったイノシシを切り殺した時に、
たまたま、その妖怪がとりついていて、殺せたのだ。